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2007年1月 6日 (土)

[映] 時計じかけのオレンジ

 1971年イギリスの作品。賛否両論で、絶賛する人もあれば、嫌悪感を示す人もいる。今まで見る機会が無かったが、お正月にWOWOWで放送されていたので、やっと見ることができた。

 舞台は近未来のロンドンらしい。青年アレックスはいわゆる不良だ。昼間はグダグダと寝て過ごす。夜になると仲間3人と共に、麻薬入りミルクを飲んで街に繰り出す。ホームレスを虐待し、他の不良グループと喧嘩をする。金持ちの家に侵入し、夫の目の前で妻をレイプする。それが彼らの日常だった。
 ところが、仲間の裏切りで、アレックスは逮捕されてしまう。14年の刑。だが、早く出所したい彼は、受ければすぐに釈放されるという、人格矯正プログラムの存在を知り、志願。そして見事矯正された彼は釈放されるのだが…

 アレックスはリーダーで、常に他の3人より上の立場だ。だが、1人がちょっと力をつけ、そのことに脅威を感じた彼は、自分の力を誇示する。そのことで、仲間から疎まれ、裏切られてしまう。この辺りまでの描写は、ありがちなお話だ。暴力シーンもかなり多く、多くの人に顔を背けられる理由だろう。だが、これはほんの序の口。監督の意図したお話は、この後なのだ。
 人格矯正プログラム。刑務所が満員で、刑務所を増やすよりは、対象者を減らした方が金がかからないという理由で取り入れられた方法らしい。犯罪を犯そうとすると、吐き気がして、暴力的なことができない体にしてしまうというプログラムだ。一見、悪いことではないような気もする。だが、道徳的なこと、物事の善悪を自分で判断するという能力を、完全に奪ってしまっている。暴力的なことをしたい気持ちは変わらないが、肉体的にできないというだけなのだ。

 釈放されたアレックスは、今まで自分が痛めつけた相手に、仕返しをされる。さらに、妻をレイプされた夫には、政府を攻撃する材料として利用されてしまうのだ。そして、今度は政府側にも利用され…

 アレックスは確かに善良な人間ではない。暴力を好み、相手のことを考えない。だが、それなら、人格矯正プログラムはどうなのか。とても人間的とはいえない。それを考えた人間はどうなのか。それを実施した人間はどうなのか。政府はどうなのか。彼を利用した人間はどうなのか。アレックスと比べて、どちらの方が悪人なのか。
 最初は、全て自分の思い通りだと思っていたに違いないアレックスは、いつの間にか、大人たちに利用されてしまう。彼自身はそれに気づいていない。無知というのは、なんと恐ろしいことか。

 この映画のおもしろいところは、シニカルなストーリーだけではなく、斬新な映像、そして、ストーリーとはかなりミスマッチ感ただよう、ベートーベンの優雅な音楽だ。全編通して、クラシックの優雅な音楽が流れているのだ。

 この映画が拒絶される理由はよくわかる。でも絶賛される理由もわかる。見たくない人がいるのは確かだ。だが、皮肉たっぷりのストーリーは、見て損はないと思う。私は好きだ。子供には見せたくないシーンも多いが、若者には見てほしいお話でもある。特に暴力に明け暮れている若者にはね。

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