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2011年5月19日 (木)

[映] ブラックスワン

 実は先週、公開早々に見に行くつもりだったのだが、例の食中毒騒動で体調不良が続き、昨日やっと見ることができた。かなりスリリングな展開だし、ハンディカメラで撮影したような映像もあるので、体調回復を待って正解だった。

 ニューヨークシティ・バレエ団のバレリーナ、ニナ。「白鳥の湖」でのプリマドンナに大抜擢される。だが、この役は、純真な白鳥だけでなく、妖艶な黒鳥の役も演じなくてはならず、ストイックな優等生タイプのニナには向いていないと指摘されてしまう。自分に足りないものを、どうすれば得られるのかわからず苦悩するニナ。彼女とは対照的な性格のリリーに誘われ、自分を開放する喜びを知るニナだったが、彼女がニナの代役を務めると知り、役を奪われるのではないかと言う恐怖に襲われる。次第に精神のバランスを崩し…

 仕事帰りに見たので、疲れて眠くなってしまったらどうしようとか、かなり激しく動くカメラワークに、また酔ってしまったらどうしよう~とか、少々不安だったのだが、なんのことはない、気づいたら終わっていた。予測のつかないストーリー展開に、すっかり夢中になっていた。

 登場人物の設定も素晴らしいし、カメラワークもすごい。バレエをこれほど近くで見ることは普通ないだろう。毛穴まで見えそうなほどの顔のアップ。関節のきしみが聞こえそうなくらいの足下のアップ。遠くから見て綺麗なバレエとは大きく違い、彼女たちが踊りながら何を考えているのかがわかりそうなほど、近い。

 ニナはおそらく完璧主義者だろう。ストイックなまでに練習を積み、自分に厳しい。踊りは常に完璧を求める。完璧になるまで練習を積む。生まれながらの美貌やスタイルの良さもあるが、彼女は努力の人である。そしてそれは、おそらく母の影響が大きい。
 母親も、かつてはバレリーナであり、おそらくはプリマドンナを目指していたに違いない。だが、望まぬ妊娠によって(おそらくは未婚)キャリアを諦めた人らしい。つまり、彼女の願望が、そのままニナに向けられている。ニナは、かごの鳥であり、母親に完全に管理されている。ニナも、母の期待に応えることこそが自分の進む道と信じ、これまで頑張ってきたのだと思う。彼女には、親友と呼べる同世代の友達がいないようである。唯一何かを相談できるのは母。

 それに対し、リリーは対称的な女性だ。自由奔放。おそらくバレエが好きでバレリーナをしているのだろうし、やりたいようにやってきたのだと思う。そして、天賦の才でここまでやってきた。彼女はいわば猫。それなりの努力もあるだろうが、ひたすら努力をしてきたと言うよりは、気ままに楽しんできた感じである。その性格故に、誰にでもフレンドリーで、開けっぴろげだ。

 ニナは、プリマに大抜擢され、大感激。だが同時に、プレッシャーに押しつぶされそうになる。さらに、自分の前任者であるベスの転落降りを目の当たりにして、自分もいつかそうなると言う恐怖にかられる。そして、自分に無い物を全て持っているリリーに、恐怖を感じる。彼女に、母親以外の親友がいたら、こうはならなかったかもしれないなと、ふと思った。

 ニナ役にナタリー・ポートマン。アカデミー賞主演女優賞受賞は納得だ。リリー役にミラ・クニス。彼女の愛くるしい笑顔も、ここまで近いとちょっと怖いから不思議。ニナの母役にバーバラ・ハーシー。演出家のトーマス役にヴァンサン・カッセル。そして、転落の元プリマ役にウィノナ・ライダー。

 もっとたくさん受賞しても良かったと思う。だが、頭の固い年輩者好みの作品ではないかもしれない。

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コメント

セレンディピティさん
これは映画館へ行って正解という作品ですよね。ただ、私が行った近所の映画館には、どう考えても場違いと思われる年齢層の方々が多く… 楽しめたのかなぁとちょっと心配しております(^o^;。

なるほど、過酷な世界なのですね。ニナが、セクハラまがいの行為をたびたび受けていましたが、そもそも19世紀(?)のバレリーナというのは、そういう存在だったようですね。ドガの有名な絵画「エトワール」を通して知りました。

投稿: マイキー | 2011年5月21日 (土) 09:56

ブラック・スワン、ご覧になったのですね!
心理描写がすごくて、圧倒される作品でしたね。

ニナはまだ若いし、バレエ以外にいろいろな経験をした方が、表現力を養うためにもいいのでは?と生意気がことを思いながら見ましたが、以前、森下洋子さんのドキュメンタリーで、私生活もすべてバレエに捧げているのを見て、これは並々ならない世界なのだな…と思いました。

これと比べると「英国王~」は無難すぎる作品ですが、たしかに「ブラック~」は審査員好みではなかったのかもしれませんね。

TBもありがとうございました。
私の後ほどさせていただきますね☆

投稿: セレンディピティ | 2011年5月20日 (金) 13:56

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